主な違法勧誘・販売行為の類型
例えば、以下に挙げるような勧誘・販売行為等を受けた結果、投資被害に遭われた場合、金融事業者に対し、法的に損害賠償請求等が可能です。
1. 顧客に適合しない取引を勧誘
一言で金融商品と言いましても、その種類は実に多岐に渡っており、シンプルな株式取引もあれば、専門家でも理解が難しい複雑なデリバティブ取引などもあります。
ですので、本来、顧客の投資目的や財産状態、投資経験などに照らして、その顧客にふさわしい金融商品と、ふさわしくない金融商品があるはずです。
しかし、現実には、例えば、投資経験など全くない高齢者の顧客に対して、およそ内容を理解することが不可能と思われるデリバティブ取引を勧誘するようなことが平然と行われていたりします。
このように、明らかに顧客にふさわしくない金融商品取引を勧誘する行為は、「適合性の原則」に違反していると評価されます。投資被害の中でも比較的よく見られる類型です。
2. 取引内容やリスクの説明が不十分な勧誘
金融事業者は、顧客に対し、投資内容を十分理解し自己責任において投資判断をなし得るための情報(当該取引契約の概要やリスク情報等)を、積極的に提供する義務があります。
しかし、実際には、顧客から特段説明を求められないことを良いことに、取引の内容とリスクを十分に説明せずに、有益性や安全性ばかりを強調して勧誘することが少なくありません。
このように、顧客の知識、経験、財産の状況および契約締結目的に照らして、その顧客に理解されるために必要な十分な説明が尽くされたと言えない場合は、説明義務に違反していると評価されます。
「大丈夫ですよ」、「安心ですよ」、といった言葉には要注意です!
3. 断定的な判断を提供する勧誘
「この株は上がります」、「これから円安になります」、といったように、金融事業者が、顧客に対し、本来不確実な事項について断定的判断を提供して勧誘することは禁止されています。また、顧客が確実であると誤解するおそれがあるような言い方での勧誘も同様です。
このような勧誘が禁止されているのは、専門家から断定的な判断を提供されると、素人である顧客にとっては非常に頼もしく感じられて、自分で判断することをせずに安易に取引に誘導されてしまうからです。
4. 虚偽の告知
金融事業者が、顧客に対し、金融商品取引契約の締結または勧誘に関して、虚偽のことを告げる行為は禁止されています。これは、その内容が重要事項であるか否かに関わりません。虚偽の内容が含まれる勧誘からは、「自己責任」を問える取引など発生しないのは当然です。
5. 損失負担や利益保証を伴う勧誘
「万が一損が出たらその分は負担しますよ」、「元金は保証しますよ」、という言葉には要注意です!
金融事業者が、顧客に対し、損失負担の約束や利益保証を伴う勧誘をする行為は禁止されています。
金融商品取引の世界で、「保証」などという甘い概念は存在しません。
6. 過当取引
過当取引とは、金融事業者(主に証券会社)が、取引における顧客の口座に対し支配を及ぼし、当該口座の本来の性格に照らして、金額・回数において過剰な取引を実行することを言います。会社としてはそれだけ手数料が稼げます。
顧客の利益よりも会社の利益を優先する発想が根底にあり、極めて問題です。
7. 一任売買
一任売買とは、金融事業者(主に証券会社)が、顧客の個別の取引ごとの同意を得ないで、売買の別、銘柄、数または価格を定めて、顧客のお金で取引を行うことを、顧客と合意することを言います。
正式に投資一任契約を締結すれば一任売買は許容されますが、実際には、投資一任契約を締結しないまま、「全てお任せ下さい」との言葉に乗って、一任売買が行われることがあります。
このような曖昧で無責任な信頼関係こそが危険なのです。