金融商品取引業の登録に必要な要件(総論)
金融商品取引業を業務として行うには、金融商品取引法に基づき所在地を管轄する財務局長の登録を受ける必要があります。(金融商品取引業が何かについては、こちらの記事をご覧ください)。
金融商品取引業の登録を受けるには、クリアしなければならない条件があります。まずは、分りやすいものから、全体を俯瞰してみたいと思います。
金融商品取引業の登録要件(主に資産要件)について
株式会である必要性 | 最低資本金 | 営業保証金 | 純資産額要件 | 自己資本規制 | 主要株主規制 | |
---|---|---|---|---|---|---|
第1種金融商品取引業 | 必要あり | 5000万円 | - | あり | あり | あり |
第2種金融商品取引業 | 不要 | 1000万円 |
1000万円 (個人の場合) |
なし | なし | なし |
投資運用業 | 必要あり | 5000万円 | - | 500万円 | なし | あり |
投資助言・代理業 | 不要 | - | 500万円※ | なし | なし | なし |
金融商品仲介業 | 不要 | 不要 | 不要 | なし | なし | なし |
上記の要件のほかに、登録拒否事由に該当しない必要があります。
登録拒否事由に該当しない事
登録拒否事由としては、次のようなものがありますが、通常はあまり問題になることはないと思います、最後の⑤を除いては...。(⑤については次項で詳しく説明いたします)
もっとも、過去に私が相談を受けたケースの中には役員が実は個人的な脱税で執行猶予中のため、登録拒否に該当してしまう・・というケースもありました。ですので、たとえ対象者が反社会的勢力や粗暴な方でなくとも十分確認していただいた方がよろしいかと思います。
登録拒否要件
① 登録を取り消され5年を経過しない者
② 一定の金融犯罪の罰金刑執行後5年を経過しない者
③ 他に行う事業が公益に反すると認められるもの
④ 法人である場合、役員または一定の使用人が次に該当する場合
ハ.禁固以上の刑執行後5年を経過しない者
ニ.役員として勤務した法人が登録等を取り消され5年を経過しない者
ホ.登録を取り消され5年を経過しない者
ヘ.解任を命ぜられ5年を経過しない者
ト.一定の金融犯罪・暴力団犯罪の罰金刑執行後5年を経過しない者
⑤ 金融商品取引業を適格に遂行するに足りる人的構成を有しない者
(下記で詳しくご説明します)
「金融商品取引業を適格に遂行するに足りる人的構成を有しない者」とは?
さて、上記にさらっと書きましたこの登録拒否要件ですが、金融商品取引業の登録を受ける上での最大の関門といっても過言ではありません。要するに「登録を受けたい業務内容に見合った経験・能力がある人が必要なだけ確保されていないと登録させない」ということです。
お客さまからご相談いただく内容として、もっとも多いのが、「どんな人が何人いればいいのか」という点です。
例えば、不動産業を営むために取得する宅地建物取引業の免許であれば、業務に従事する者5人につき1人の割合で宅地建物取引士が必要と明確に定められていますが、金融商品取引業の場合には、そうではないため、質問の答えはお客さまがどの区分で登録を受けたいのか、さらにどんな業務を行うかにより、変わってくるという初めての方には分かりにくいものとなってしまいます。
ただし、どんな場合にも共通して必要になり、かつ特にネックになるのが、営業部門から独立した(助言業の場合は法令上は独立していなくとも可)コンプライアンス部門を置き、担当者として経験・能力を有する者を充てる必要があるという点です。
特に小規模の会社ですと、金融商品取引業者のコンプライアンス担当者として経験・能力がある者(どの程度の経験・能力が必要になるかは取り扱う業務により異なります)が確保され、営業部門から独立したコンプライアンス部門にいるということは、通常難しいことが多いと感じるのですが、登録のためには何とか確保いただく必要がございます。
ただ、どうしても十分な能力を有する適任者の確保が難しい場合には、コンプライアンス業務をについて、外部の弁護士等の専門家事務所に社内の担当者のサポートを委託するという方法もあります。
なお、当グループでも、弁護士法人トラスティルによるコンプライアンスサポート受託サービスや内部監査サポートサービスを提供しておりますので、ご参考にしていただければと思います。