知らない間に法人が解散!?「みなし解散」にご注意を!

知らない間に法人が解散!?「みなし解散」にご注意を!

10月になると、法務局から突然「事業を廃止していない届出をしてください」と通知書が送られてくることがあります。届いた皆さん、対応はされましたか?何もせずに無視をしていると12月には会社・法人が「解散」されてしまいます。

法務局から通知書が届いたら

法務局から送付される通知書の様式をご覧ください。こちらは「まだ事業を廃止していない届出」をするように促す内容となっています。

送付される通知書の様式(法務局のホームページより引用)

今後も事業を廃止せずに続ける意向の場合は、次のとおりに対応をしてください。

  1. 通知書に指定された締切日(12月中旬)までに、その届出書を法務局に提出する
    ⇒締切日までに提出をしないと「解散」の登記がされます
  2. 役員(取締役・理事)の再任の登記を申請する

なお、事業を廃止する場合(=会社が解散されても問題ない場合)はこの通知書への対応をしなくても問題ありません。

知らないうちに解散が登記された

「税務署から突然『あなたの会社・法人は解散したから解散年度の申告をしてほしい』と連絡がきた」「自社の登記事項証明書を取ってみたら、知らないうちに解散が登記されていた」これらは、実際にお客さまから当グループに寄せられた相談です。
皆さん驚いて相談に来られますが、長い年数、会社・法人について何の登記もしていないと、解散しているとみなして法務局が登記をします。これを「みなし解散」といいます。

心当たりがある方は、法務局発行の履歴事項全部証明書をご確認ください。
「令和●年12月●日会社法第472条第1項の規定により解散」「令和●年12月●日一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第149条第1項の規定により解散」この記載がありましたら、みなし解散の登記がされています。

みなし解散になると会社・法人はどうなるか

みなし解散は通常の解散と同じです。解散後は清算の手続きに移行し、清算の目的のために存続する会社・法人となります。登記された目的や営利、非営利に関わらず、通常の事業は行えません。

また、清算中の会社・法人は取締役や理事も置くことができないため、解散時に退任となり、取締役および代表取締役あるいは理事および代表理事の登記は自動的に抹消されます。この時、監査役、監事は退任にならず、登記がそのまま残ります。
取締役会を置いている株式会社や理事会を置いている法人の場合は、取締役会設置会社、理事会設置会社の登記も抹消されます。

注意していただきたいのは、事業年度(決算日)が変わることです。通常は、定款などで定められた事業年度の「開始の日」~「終了の日」となりますが、みなし解散がされると、(定款の規定に関わらず)その日をもってその事業年度は終了となります。次の事業年度はみなし解散の日の翌日から1年間となり、その後の事業年度は同様に続いていきます。
事業年度の終了により、みなし解散の日までの期間の決算と法人税、消費税等の税務署への申告が必要です。実際に、税務署から「解散をして年度が終了したのだから、確定申告をしてください」と促されたことがきっかけで、みなし解散に気づく会社・法人は多いです。

みなし解散が登記されていたらどうすればいいか

まず、清算会社・法人の業務を執行する清算人を登記する必要があります。清算人になるのは、原則として従来の取締役、理事です。(前述のとおり、解散のときに取締役、理事は退任になり、登記も自動で抹消されています)
ただし、定款で清算人が指定されている場合または株主総会で清算人を選任した場合は、その指定または選任された人が清算人となります。
清算人が決まると、法務局に定款を提出の上、清算人と代表清算人の登記を申請してください。清算人を株主総会で選任した場合は、その議事録も提出してください。

また、先にご説明したとおり、事業年度の終了に伴う決算と法人税、消費税等の税務署等への申告も忘れずに行いましょう。

事業を廃止せずに続けたいとき

清算中の会社・法人は清算のみを目的とするので、解散前の事業は行えなくなります。事業を廃止せずに続けたい場合は、会社・法人の「会社継続・法人継続の決議」をして、解散していない状態に戻す必要があります。
具体的には、清算人が株主総会(社団法人は社員総会、財団法人は評議員会)を招集し、「みなし解散になった会社・法人を継続すること」の決議をします。この決議は、特別決議ですので注意が必要です。

  • 特別決議…株式会社の場合は、原則、株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって決議する

継続の決議以外に、「取締役・理事の選任の決議」も必要です。こちらは普通の決議となります。取締役や理事はみなし解散のときに退任となっているので、同一の人間がその任にあたるとしても、改めて選任する必要があります。なお、清算人は、解散した会社・法人の清算業務を運営するために置かれるものなので、会社・法人の継続が決まったときに役目を終え、退任となります。併せて、代表取締役・代表理事を定款の規定に従い選任してください。

以上の一連の手続きが終了したら、法務局に総会等の議事録や取締役・理事の就任承諾書、印鑑登録証明書などを提出のうえ、会社・法人継続、取締役・理事と代表取締役・代表理事の選任の登記を申請します。みなし解散前に取締役会・理事会が置かれていた会社・法人は、(定款の改定がされない限り)取締役会設置や理事会設置の登記も併せて申請しましょう。

また、会社・法人を継続すると、その継続の日をもって事業年度は終了となり、決算と法人税、消費税等の税務署への申告が必要です。次の事業年度は、定款などで定められた事業年度の「終了の日」までとなります。

会社継続・法人継続の手続きはいつまでに?

「みなし解散」が登記されてから3年以内です。その日までに決議をしないと継続はできません。いずれにしても解散になった会社・法人には取締役・理事が不在ですので、事業を続けたい場合は速やかに継続の決議と取締役・理事および代表取締役・代表理事の選任を行いましょう。

もともと休眠状態だったためこれを機に会社・法人を辞めたい

先にご説明したとおり、まず、清算人の選任の登記申請と、決算および税務署への申告を行ってください。その後は、清算の処理に移ります。具体的には、未回収の債権の回収、未払いの債務の支払い、資産の処分を行い、残余の財産がある場合は株主への分配等です。また、官報に解散公告を掲載する必要もあることに注意してください。一連の清算が終わると、「清算事務の結了」を総会等で決議し、法務局へ登記を申請する他、税務署への申告を行います。

なぜ「みなし解散」がされるのか

最後の登記をしてから一定の期間が経過しているのに、会社・法人についての登記をしていないためです。株式会社は12年以上、社団法人と財団法人は5年以上経過したときにみなし解散の対象となります。
法律では、株式会社の取締役の任期は最長10年、社団法人と財団法人の理事の任期は最長2年とされています。同じ人が引き続き取締役・理事になるにしても、再任の手続きと登記は必要です。この期間に登記がされていないと、「事業を行っていない休眠会社・休眠法人」として扱われ、解散とみなされます。
先にご説明したとおり、対象となる会社・法人には、毎年10月に「まだ事業を廃止していない届出」をするように促す通知書が送付されます。それでもその届出または登記がされないと、12月中旬にみなし解散が登記されます。

みなし解散にならないためには?

任期ごとに取締役・理事の再任の登記を忘れずに申請してください。

以上、みなし解散とその対応方法について解説させていただきました。当グループでもご紹介した手続きの相談や代行等のサービスを行っておりますので、必要な方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。