起業時に使える各種法人のメリット・デメリット

起業時に使える各種法人のメリット・デメリット

株式会社・合同会社・一般社団/財団法人・NPO法人etc...
起業時に使える法人は会社以外にもまだまだあるんです!

みなさんは、会社以外にも、起業時に使える様々な形態の法人があることをご存じでしょうか。
1番馴染みのあるのは株式会社だと思いますが、事業内容や設立目的によっては、 株式会社以外の法人が適している場合があります。
場合によっては、税金など金銭面で得をすることもあったりします。

そうは言っても、違いがよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、これから法人を設立して新規事業を立ち上げようとお考えの方に向けて、非営利法人を選ぶと税金が安くなるなど、様々な法人の特徴・メリットやデメリットを解説していきたいと思います。

営利法人と非営利法人...非営利って儲けてはいけないの?

法人の形態は、まず大きく2つに分類することができます。
営利法人非営利法人です。
営利法人の代表と言えば、株式会社です。
株式会社は、業績がよく、利益が沢山出ると、員や従業員の給与や賞与が増えたりすることはもちろんですが、何よりも出資してくれた株主に対し、配当という形でその利益を分配します。

では、逆に非営利法人の代表とも言えるNPO法人はどうでしょうか。
非営利というと、ボランティアをイメージされる方がとても多いのですが、
一定の制限はあるものの、事業を行って利益を上げることも可能なのです。
そして、もちろん役員や従業員に対し報酬や給与を支払う

こともできます。

ただ、先に述べた株式会社とは異なり、利益をNPO法人の構成員である会員に配当することができないということです。

つまり、営利とは、「利益を構成員に分配する」ことであり、利益を出すという意味ではないのです!

逆を言うと、非営利とは「利益を分配できない」という意味であり、
利益を全く上げないボランティア活動のことではないのです。

このことは、これから起業をされる方にとって、選択肢が大きく広がることを意味するといっても過言ではないと思います。

以下が営利法人と非営利法人の代表的なものです。

営利法人

  • 株式会社
  • 合同会社

※営利法人には合資会社・合名会社もありますが、設立数が少なく、本記事では省略します。

非営利法人

  • 一般社団法人
  • 一般財団法人
  • NPO法人
  • 中小企業等協同組合

では実際に、それぞれの法人の違いについて、上から順番に説明していきたいと思います。

①設立方法と期間

非営利法人であるNPO法人は、所轄庁の認証を受けてから登記となるので、設立まで時間がかかります。
それ以外の法人は、登記のみで設立できるため、必要な書類がそろっていれば2週間よりも短い期間で設立可能です。

営利法人 非営利法人
株式会社 合同会社 一般社団法人 一般財団法人 NPO法人
設立方法 登記のみ 登記のみ 登記のみ 登記のみ 所轄庁の認証+登記
設立期間 2週間程度 1.5週間程度 2週間程度 2週間程度 4~6ケ月

営利法人、非営利法人別一覧表はこちら>>

②設立費用(法定費用)

国に納める登録免許税や定款認証の際に、公証役場に支払う手数料のことです。
手続きをすべてご自身で行う場合には、この費用だけをご負担することになるため、この費用だけで見ると、NPO法人は0円と一番お得です。
ただ、実際には専門家に依頼することも多いでしょうし、準備する書類の数や手間を考えると、実際の費用はかかることになりますので、費用を重視する方には合同会社がお勧めです。

営利法人 非営利法人
株式会社 合同会社 一般社団法人 一般財団法人 NPO法人
設立費用
(法定費用)
202,000円 60,000円 112,000円 112,000円 0円

営利法人、非営利法人別一覧表はこちら>>

③利益の分配

事業を通じて上がった利益を出資者・構成員に分配することが出来るかどうかについてです。
上でご説明した通り、営利法人である株式会社・合同会社は分配が可能で、基本的には出資の割合に応じて分配されることになりますが、合同会社は、貢献度を加味する等これ以外の分配を行うことも可能となっています。
非営利法人である一般社団法人・一般財団法人・NPO法人は分配を行うことが出来ません。

営利法人 非営利法人
株式会社 合同会社 一般社団法人 一般財団法人 NPO法人
利益の分配
(出資割合による)

(出資割合によらず、自由に設定)
不可 不可 不可

営利法人、非営利法人別一覧表はこちら>>

④必要最低人数

法人を設立する際に、必要となる人数です。
一昔前までは、株式会社は必ず取締役会を設置しなくてはならなかったこともあり、必要人数が4人でしたが、現在は1人いれば設立が可能となったことは、とても大きなメリットです。
一般財団法人は、7名以上、NPO法人は、10人以上の人数が必要になりますので、設立当初からそれなりに大きな規模になります。

営利法人 非営利法人
株式会社 合同会社 一般社団法人 一般財団法人 NPO法人
必要最低
人数
1人 1人 2人 7人 10人

営利法人、非営利法人別一覧表はこちら>>

⑤役員の任期

役員とは、株式会社では、取締役、(監査がいる場合には監査も含まれる)、合同会社では業務執行社員、NPOなどの非営利法人はいずれも理事と監事のことをいいます。
任期があるということは、その期間が終わるたびに新しい役員を決めることになり、任期が短いと、そのたびに法務局への役員変更登記の手続き、NPO法人に限っては所轄庁への報告も加わり、別途費用や手間がかかるというデメリットがあります。

その点、役員の任期がない合同会社は費用も手間もかからないというメリットがあります。

営利法人 非営利法人
株式会社 合同会社 一般社団法人 一般財団法人 NPO法人
役員の任期 原則2年
※短縮することも可能
※譲渡制限のある
株式会社最長10年
なし 原則
理事2年
監事4年
※短縮することも可能
原則
理事2年
監事及び
評議員4年
※短縮することも可能
理事・
監事共に
2年

営利法人、非営利法人別一覧表はこちら>>

⑥事業の制限

NPO法人以外の法人は、いずれも制限がありませんので、法に抵触する事業や反社会的な事業ではなければ、基本的にはどんな事業をしてもかまいません。

営利法人 非営利法人
株式会社 合同会社 一般社団法人 一般財団法人 NPO法人
事業の制限 なし なし なし なし あり

営利法人、非営利法人別一覧表はこちら>>

⑦設立時の資金

②で述べた、設立費用(法定費用)以外で、法人を設立するための条件として支出する必要があるお金のことです。
一般財団法人は300万円と断トツで高いですが、その他の非営利法人はいずれも0円です。
営利法人でも、1円以上となっています。
ただ、実際には設立してからは設備費用などでお金がかかりますので、資金は多いに越したことはないと思います。

営利法人 非営利法人
株式会社 合同会社 一般社団法人 一般財団法人 NPO法人
設立時の資金 1円以上 1円以上 なし 300万円 なし

営利法人、非営利法人別一覧表はこちら>>

⑧行政への報告

①で述べましたが、NPO法人は設立する際に所轄庁(都道府県などの行政)の認証が必要です。
そのため、設立後にも所轄庁に1年に1回、事業報告をし、変更があった場合にはその都度届け出が必要です。

その他の法人は、登記だけでできるため、行政への報告義務はありません。

営利法人 非営利法人
株式会社 合同会社 一般社団法人 一般財団法人 NPO法人
行政への報告 なし なし なし なし あり

営利法人、非営利法人別一覧表はこちら>>

⑨課税

法人は、公益法人などの一部の例外を除き、原則として事業年度が終わると決算を行い、税金を納めるために、税務署に申告しなくてはなりません。
この税金を計算する上で、課税される所得が法人の形態によって異なるのです。
通常は、全所得に課税されますが、NPO法人や非営利型の一般社団法人・一般財団法人については、国税庁が決めた収益事業に該当する場合に、その収益事業のみに対してだけ税金がかかってくるのです。
これらの法人は、収益事業をメインにした法人でないことから、このような優遇が認められていると考えられます。
ただ、そうはいっても収益事業は全部で34種類あり、事業のほとんどはこの34種類のいずれかに該当することになります。
逆を言うと、極めて限られた範囲の事業だけが非課税となるということで、実質的にはほぼすべてに課税されると言えるでしょう。

営利法人 非営利法人
株式会社 合同会社 一般社団法人 一般財団法人 NPO法人
課税 全所得 全所得 全所得
※非営利型の場合、収益事業のみ
同左 収益事業のみ

営利法人、非営利法人別一覧表はこちら>>


⑩全体的なメリット・デメリット

それではそれぞれのメリットとデメリットをまとめてみましょう。

営利法人 非営利法人
株式会社 合同会社 一般社団法人 一般財団法人 NPO法人
メリット
  • 国民の誰でも知っている
  • 資金を集めやすい
  • 上場できる
  • 設立費用が安い
  • 出資額に関係なく自由に利益の配分が行える
  • 決算公告義務がない
  • 登記のみで設立できる
  • 非営利型にすることで、課税が収益事業に限定される
  • 少人数かつ設立時資金が0円で設立できる
  • 公益法人化が可能
  • 登記のみで設立できる
  • 非営利型にすることで、課税が収益事業に限定される
  • 公益法人化が可能
  • 国民の知名度・信用度が高い
  • 自治体等の事業で受託できるところをNPOに限定されている場合があり、事業機会が多くなる
デメリット
  • 設立費用が高い
  • 他の法人に比べると信用度が落ちる
  • NPOに比べると国民の信用度・知名度が落ちる
  • NPOに比べると国民の信用度・知名度が落ちる 
  • 設立資金が高い
  • 設立までの期間が長い
  • 所轄庁に対し、毎年1課の報告や変更事項の届出が必要

まとめ

上記で解説しました内容を営利法人、非営利法人に分け一覧表としてまとめました。

営利法人

株式会社 合同会社
設立方法 登記のみ 登記のみ
設立期間 2週間程度 1.5週間程度
設立費用
(法定費用)
202,000円 60,000円
利益の分配 可(出資割合による) 可(出資割合によらず、自由に設定)
必要最低人数 1人 1人
役員の任期 原則2年
※譲渡制限のある株式会社は最長10年
なし
事業の制限 なし なし
設立時の資金 1円以上 1円以上
行政への
報告義務
なし なし
課税 全所得 全所得
メリット
  • 国民の誰でも知っている
  • 資金を集めやすい
  • 上場できる
  • 設立費用が安い
  • 出資額に関係なく自由に利益の配分が行える
  • 決算公告義務がない
デメリット
  • 設立費用が高い 
  • 他の法人に比べると信用度が落ちる 

非営利法人

一般社団法人 一般財団法人 NPO法人
設立方法 登記のみ 登記のみ 所轄庁の認証+登記
設立期間 2週間程度 2週間程度 4~6ヶ月
設立費用
(法定費用)
112,000円 112,000円 0円
利益の分配 不可 不可 不可
必要最低人数 2人 7人 10人
役員の任期 原則、理事2年・監事4年
※短縮することも可能
原則、理事2年・監事及び評議員4年
※短縮することも可能
理事・監事共に2年
事業の制限 なし なし あり
設立時の資金 なし 300万円 なし
行政への
報告義務
なし なし あり
課税 全所得
※非営利型の場合、収益事業のみ
同左 収益事業のみ
メリット
  • 登記のみで設立できる
  • 非営利型にすることで、課税が収益事業に限定される
  • 少人数かつ設立時資金が0円で設立できる
  • 公益法人化が可能
  • 登記のみで設立できる
  • 非営利型にすることで、課税が収益事業に限定される
  • 国民の知名度・信用度が高い
  • 自治体等の事業で受託できるところをNPOに限定されている場合があり、事業機会が多くなる
デメリット
  • NPOに比べると国民の信用度・知名度が落ちる
  • NPOに比べると国民の信用度・知名度が落ちる
  • 設立資金が高い
  • 設立までの期間が長い
  • 所轄庁に対し、毎年1課の報告や変更事項の届出が必要

私たちは、法人を設立しようとしている方、それぞれのやりたいこと・未来のビジョンを実現するため、ともに考え、設立から経営まで全面的にサポートしていきたいと考えております。
この記事が、少しでもお役に立てることを願い、結びとさせていただきます。

なお、ご参考までにそれぞれの法人について、当社の設立サービス情報へのリンクを下記に掲載していますので、ご興味のある方はクリックください。