金融商品取引と投資被害(2)

~投資被害救済のサポート方法

金融商品取引と投資被害(2)

前の記事[金融商品取引と投資被害(1)]では、投資被害について、代表的な金融商品や主な投資被害・違法勧誘・販売行為の類型という観点から解説しましたが、それでは投資被害を回復するためには具体的にどのような手段・方法があるのでしょうか。

ここでは、考えられる3つの方法について解説いたします。弁護士が代理人となることを想定した説明をしていますが、いずれも弁護士に依頼せず、ご本人が対応することも可能です。

和解交渉

金融事業者に対して損害賠償請求等の意思表示をして、交渉を行い、被害救済を実現する解決(和解)を図ります。まずはこの和解交渉を試みるケースが多いです。

一般的にまずは、内容証明郵便等の方法で、金融事業者に対して損害賠償請求等の意思を伝えます。その後、金融事業者と電話やFAX等の手段で粘り強く交渉を行い、被害救済を実現する解決(和解)を図ります。

意外と和解は成立します!

金融事業者としても、自社に全く非がないと断言できるようなケースでもない限り(つまり何かしら後ろめたい要素がある場合)、その後のADRや裁判のステージに上がることの諸々のデメリット、リスクを勘案して、話し合い(和解)による迅速な解決を希望することが少なくありません。特に、弁護士が顧客の代理人として交渉する場合にはその傾向が強いです。一般的に持たれるイメージよりも、意外と和解は成立するのです。

和解交渉の一般的な流れ

金融ADRの利用

金融ADRは、裁判に比べて、費用や労力を抑えられるメリットがあり、なおかつ、実質的に投資家保護に資する結果になりやすい制度です。積極的な利用をお勧めします。

金融ADRはお勧めです!

自分で投資被害を主張したが、金融事業者が全く相手にしてくれなかった。
弁護士を立てて和解交渉したが、金融事業者は全く非を認めず、決裂した。
弁護士を立てて裁判を起こしたいが、時間も費用もたくさんかかりそうで困る。
このようなお客さまは、ぜひ金融ADRを活用しましょう。

金融ADRは、弱い立場に置かれた一般投資家を保護するための制度です。裁判に比べて費用や労力を抑えられるメリットに加え、実質的に投資家にとって有利な結果を生みやすいのです。活用しない手はありません。

金融ADRって何?

「ADR」とは、裁判外紛争解決手続(Alternative Dispute Resolution)の略称です。簡単に言えば、裁判によらずに、公正な第三者の関与の下で、当事者が話し合いにより紛争解決を図ることです。

金融ADRは、近年、金融商品・サービスが多様化・複雑化し、金融トラブルが多発化する中で、金融取引について利用者保護の充実・強化を図る目的で、2010年10月から導入された、金融トラブルを対象とするADRです。

投資被害の金融ADR機関はどこ?

金融事業者は、法律上、顧客との紛争を解決する措置として、指定紛争解決機関もしくは外部ADR機関を指定することが義務付けられています。ですので、顧客は、その金融事業者が指定しているADR機関に申立てをすれば良いのです。

投資被害の場合、一般的には、「FINMAC」や「弁護士会紛争解決センター」といったADR機関を利用できるケースが多いです。

指定紛争解決機関

ADR機関 対象となる業務
特定非営利活動法人証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC) 特定第一種金融商品取引業務

主な外部ADR機関

外部ADR機関 対象となる業務
弁護士会紛争解決センター 第二種金融商品取引業務
投資助言・代理業務
特定非営利活動法人証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC) 第一種金融商品取引業務、登録金融機関業務
投資信託業務
投資運用業務
投資助言・代理業務
金融先物取引業務
第二種金融商品取引業務
金融ADRの一般的な流れは?

金融ADRのメリットは?

①低コスト

手続費用が裁判と比較して割安です。

②迅速な解決

各ADR機関の運用によって差はありますが、大まかな目安としては、申立てから6か月以内で解決に至ることがほとんどです。

③金融の専門家が仲介

金融の専門家(弁護士など)が紛争解決委員となりますので、実質的に公平で適正な提案がなされる可能性が高いです。

④金融事業者に三大義務(応諾義務・説明義務・受諾義務)あり

金融の専門家(弁護士など)が紛争解決委員となりますので、実質的に公平で適正な提案がなされる可能性が高いです。

応諾義務

ADR手続が開始した場合、金融事業者は正当な理由なく手続を拒否できません。

説明義務

紛争解決委員の求めにより、金融事業者は期日に出席し、事実関係を説明しなければなりません。また、求められた資料の提出を拒むことができません。

受諾義務

金融事業者は、紛争解決委員の示した和解案を正当な理由なく拒否できません。

この三大義務があることによって、裁判に比べて実質的に投資家の保護に資する結果になりやすいです。

訴訟

金融事業者に対して損害賠償請求等の裁判を起こします。和解交渉や金融ADRは、あくまで話し合いによる解決を目指しますので、当然ですが一方当事者が納得しなければ解決には至りません。そうなれば、納得がいくまで裁判のステージで争うことになります。

訴訟提起から判決に至るまでの期間は、6ヶ月~1年程度が目安です